「もったいない」―ドイツのドキュメンタリー映画

渋谷のミニシアターで「もったいない」というドキュメント映画を見た。

この映画は、現代社会の食品廃棄物・食品ロスの現状及びその問題に挑戦しようとしている人たちを追ったドイツのドキュメンタリーである。環境立国ドイツだからこそできた映画だと思う。


最初にゴミ箱から食料を取り出すドイツの二人の若者が登場する。賞味期限や消費期限の前の食品や買ったばかりの野菜などがそのゴミ箱から取り出される。若者は今夜の夕食の食材だといい、新鮮なものをリュックに詰めて自転車で去っていく。彼らがもっていった「ゴミ」はまったき食材であってもゴミではないのに、捨てられている。「もったいない!」 もちろん二人の若者はホームレスではない。フランスでは賞味期限前のヨーグルトが毎日500〜600トン捨てられているという。日本でも寿司パックは新鮮のものだと売れるので、賞味期限(消費期限前ではない)の2、.3日前にスーパーでは廃棄され、新しいのを並べるという。
―いつもスーパーで買い物をしていると、こんなに山積みされている野菜は、日にちが経つとゴミになるのかしらと思いつつも、自分もその山のなかから新しい食品を選んでいる。


農家の人は嘆く。作ったキュウリやじゃがいもの等の野菜も規格・等級に合わないとスーパーが引き受けないので、畑に放置するしかない。小さい物や大きすぎる物やまがった物は味は変わらないのに売れないのだ。近所の人たちが時々畑に捨てられたじゃがいもを拾いに来るのが、せめてもの救いだと思うという。人間と同じように、食べ物も見た目が優先するのだ。アメリカでは野菜の10〜15%は廃棄されているという。


パンの売れ残りはどうだ。2割がいつも廃棄されている。しかもスーパーでは棚を一杯にしておかないと売れないので、売れるようなパンをいつも満杯にして、「余り」をだすようにしているのだという。しかもそれらの「余り」は有効利用されないで廃棄物となる。BSE問題が起きてから、EUでは食品廃棄物は豚の飼料にはしないそうだ(日本では危険物を除去したうえで食品残さとして飼料としているようだ)。


無駄にしているのは輸入の新鮮食品もそうだ。箱の中の果物が検査で一個でも熟度が過ぎたり腐っていると、どんなに遠くからきだ果物でも開けられることなく箱ごと廃棄される。従業員がそれらのなかから一部取り出して持って帰って利用するのも禁止されているそうだ。そういう従業員は人員整理の対象者となるそうだ。こういうシステムは果物を一生懸命に育てて先進国に送り出した発展途上国の貧しき人たちの生活を一層貧しくさせている。


唯一の救いは、ドイツなどで食品廃棄物をエネルギーに転換しようという動きが紹介されていることだ。食品廃棄物からメタンガスを発火させて原発に代わる電気エネルギーを生みだそうという。ハンブルグ発電所の試みが模索されているという。
また日本の「はまポーク」のように生産者と消費者が直接手を結びあい、無駄をなくす運動もあることだ。そういえば、この頃道の駅などでの購買所もその役割をしているようだ。


この頃の映画には、ときどきこういう社会派の素晴らしいものがあるが、この映画もその一つだろう。