料理の社内検定とは

料理に関する検定制度にはさまざまありますが、近頃、食品メーカーが調理技術や知識の「食の社内検定」を採り入れる試みが広がっているそうです。これは決して食企業の販売戦略ということだけではないように思います。これは、どうやら一昨年のユネスコの和食文化無形文化遺産登録と結びついた国の食産業政策の一環でもあるようです。でもこうした検定制度ははたして「食」の世界にふさわしいものなのでしょうか。

 食の検定制度というと、思い出される言葉(「すしポリス」)があります。2006-7年頃に当時の農林水産相松岡利勝が、海外での日本料理の流行を受けて、それが本物の日本料理かどうかを認定するための制度を設定しようとしたのです。こうした動きに対して、アメリカなどのマスコミが「ニセ日本食の取り締り」だと、この言葉で皮肉ったそうです。それでこの企画は中止されましたが、昨今の検定制度にこれと同じような印象をおぼえます。(河上睦子『いま、なぜ食の思想か』より)

 またミシュランの検定に多くの料理人や人たちが必ずしも同意していないように、この検定も一つの商戦としか感じないようにも思います。料理の世界とは、個々人の味覚や嗜好に属している多様な美味への欲求に根ざすものでしょう。


 本当に必要な食の検定とは、「安全性」を問題にするものでしょう。昨日、食中毒で中学生が死亡したとの事件がおきました。こうしたことがおきないように、料理の検定こそが重要であるはずです。